執行役員制度の運用上の留意点

執行役員制度の運用場面では、「執行役員の法的地位」「執行役員の権限」「会社の他機関等の執行役員に対する関係」に留意する必要がある。


1.執行役員の法的地位(会社との契約関係)

会社との契約関係が、就任パターンによって多少の差異が生じる。

A:会社の従業員が、従業員としての地位を喪失せずに(執行役員への就任が退職事由とはならずに)執行役員に就任する。

この場合は、雇用関係。

B:会社の取締役が、退任した上で、執行役員に就任する。

この場合は、雇用契約でも委任契約でも可能。会社が当該執行役員をどのように位置づけるかにより決まる。

C:会社の取締役が、取締役としての地位を保持したまま、執行役員に就任する(取締役兼務執行役員)。

この場合は、委任関係(委任型)。


2.執行役員の権限

現行法上は、執行役員に法律上権限が与えられているものではなく、その就任によって当然何らかの権限が生ずるものではない。その権限の具体的内容は、執行役員規程や職務分掌規程などによって定められる。


3.会社の他機関等の執行役員に対する関係

■ 株主総会

執行役員は株主総会に出席する権利義務はないが、取締役の指示に基づいて出席することは可能である。

■ 取締役会

取締役会は執行役員について選任及び解任権を有する。また、執行役員は取締役会の審議や決議に参加できないが、取締役の指示に基づいて、取締役会において説明や報告を行うことは可能である。

■ 代表取締役

執行役員は、代表取締役の業務執行権限の委譲を受けて業務執行を行う使用人であるから、代表取締役は、執行役員に対する監視監督を直接行う権限を有しており、かつ、義務を負うと考えられる。

■ 各取締役

各取締役は取締役会を通じて代表取締役の業務執行について監視監督する義務を負うため、代表取締役の業務執行権限の委譲を受けた執行役員の行為につき、代表取締役を監視監督することによって、間接的に監督する権限と義務を負うと考えられる。

■ 監査役、監査役会

監査役は執行役員の行為について、直接に差止請求権を行使することはできないが、取締役の職務の執行を監査する権限と職責を負う(会社法381条1項)ため、取締役(代表取締役)に対して監査権限を行使し、取締役をして、執行役員の行為について監視監督させることで、取締役を通じて、間接的に、執行役員の行為に対して監査権限を行使することができる。